メモ的に図書館の話

図書館法に無料原則がある限り、公営だろうと民営だろうと図書館ビジネスは単体ではペイしない。したがって民間企業が参入することはありえず、設立運営の財源は税金由来のものとならざるをえません。

(入館料等)
第17条 公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない。
http://www.houko.com/00/01/S25/118.HTM

もちろん、メセナ的な事業あるいは私企業の広告的存在として図書館が存在する可能性は無いではないし、美術館等の他の公的施設に先例はあるが、ちょっと難しかろう。
結局のところ、図書館に民間経営のセンスを導入するのは、業務を効率化して予算内で少しでもサービスを向上させるためとなろうが、実際にはサービスを維持したまま予算だけ削減する自治体は多いと聞く。つまりサービス向上から予算削減にプライオリティが切り替わっているわけだ。まあ自治体の懐具合が寂しいのはみんなわかっているので文句は言わないが、サービスアップを念頭に置くのと置かないのとでは、業務効率化を実践するのにも自ずと違いが現れてきそうなものである。
もうひとつ。他業種でもそうなのだけど、民営化・効率化というとすぐに正規職員を派遣や契約職員などの非正規雇用に切り替えて経費を減らそうとする発想が出てくるが、これってどうなのかね。本質的に利潤追求を義務付けられている私企業と異なり、公的セクションのサービス事業においてスタッフを非正規雇用に頼ることに、何の疑問も覚えないのかな。公務員では思いつかなかったor実現できなかった「ソリューション」を民営化に求めるのであって、スタッフ増やしましたサービス拡大しました要因は正規職員の代わりに派遣とバイトでまかなったことです、なんていうのは醜悪なアイロニーに思えるんですがね。何でこのご時勢に役所が率先して非正規雇用増やしてんだよ。
まあ前にどこかのブックマークコメントにも書いたとおり、どんな公的サービスも納税者or有権者or地域住民がいらないって言ったらいらなくなるわけで、病院は撤退します図書館も閉鎖します成人式は執り行いますっていう判断を下すのも、それが住民の意思ならありなんでしょう。必要とされないサービスは淘汰される。市営のバスと市営の図書館ではバスのが大事と思う人も、いて当然ですから。
要は「あなたが望むのは今よりも図書館が多い世界ですか?少ない世界ですか?図書館の無い世界ですか?あるとしたらどんなサービスが行われていますか?その世界では他にどんな公共サービスが行われていますか?」という話であって、民営化云々が核ではないはず。その辺で論点や現状認識が共有できなければいつまでたっても議論は空回りするばかりでしょう。最も魅力的なゲストキャラはギラーミンかバギーちゃんかという話をしているときに、『少年期』って名曲だったよなと言われても困るわけで。あなた達はきれいなジャイアンリリアンでも編んでて下さい。
公共図書館大学図書館と中高の図書室では必要とされる職能は違うし、日常業務でルーチンの仕事をこなすのに常に専門性を必要とするとも限らず、図書館ユーザー外の人から見れば非効率な部分も多いだろう。「どうして現状のサービスはこうなっているのか?」という利用者の疑問については中の人がより積極的に応答すべきと思うけれど、積み重ねられた議論を参照もせずに上っ面だけなぞって「お前らの仕事無意味じゃね?」「図書館とか行かんし。」とか言われても答えようがないのである。
昨年末以来、図書館関係の議論が(ごく狭い範囲ながら)巻き起こっているので、この機会に情報のやり取りが活発になればいいなあと思う次第。
(追記)
404 Blog Not Found:図書館の費用対効果については、参考資料として以下の記事も提示しておく。

香川県高松市は、市有施設の行政コスト計算書(二〇〇五年度版)を初めて作成し、二十六日、公表した。利用者一人当たりのコストが最も高かったのは香南歴史民俗郷土館で七千二百八十円、逆に最低は国分寺図書館の四百九十七円だった。「高コスト施設」の大半は、利用者の伸び悩みが要因となっている。
(中略)
 コストの安い施設は、国分寺図書館に次いで牟礼図書館(五百六十九円)、亀水運動センター(七百二十九円)と図書館や運動施設が並び、幅広い市民が利用する施設で効率的な運営が行われていた。
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また最近ブックマークした記事の中からいくつかリンクしておく。興味を持たれた方はどうぞ。