アジアカップ2007予選 イエメン戦

日本 2−0 イエメン
得点:阿部勇樹(後半25分),佐藤寿人(後半44分)
GK 23 川口能活
DF 20 坪井慶介
DF 21 加地亮
DF 31 駒野友一(後半0分 MF 51 羽生直剛
DF 45 田中マルクス闘莉王
MF 4 遠藤保仁(後半26分 MF 57 佐藤勇人
MF 14 三都主アレサンドロ
MF 30 阿部勇樹
MF 55 鈴木啓太
FW 36 巻誠一郎
FW 38 田中達也(後半44分 FW 37 佐藤寿人

誰もが思ったことでしょうが、前半はジーコジャパンを髣髴とさせるグダグダっぷりでしたね。まあ引いた相手を切り崩すのが難しいのはどこでも同じだし、アジア相手では今後もこういう展開の試合が多くなることが予想されるわけで、守備を固めた相手をそれでも打破するのが真の強者だということを再確認しました。ジーコ時代と違ってピンチはほとんどありませんでしたけど。
スタメンを見たときは、中盤の底に啓太を据え、三都主を左WGに置いての4-3-3かと思ったんですが、どうも遠藤を右SHに置いた4-4-2だったみたいで。この遠藤の働き方が、この試合の苦戦の一因だったような印象を受けました。
前にも書きましたけど、僕は遠藤という選手を高く評価しています。ガンバで見せる攻守両面における存在感はJでも有数のものであると感じています。しかしイエメン戦に限って言えば、いわゆるボランチとしての働きは啓太も阿部も出来るわけだから、3人の中で経験的にも能力的にも遠藤こそが最も能動的に動くべきであったと思いました。まあ遠藤の立場に立てば、「自分の適性はボランチであってそういう役割で輝くタイプではない」と言いたくもなるでしょうが、オシムはその人の適正ポジションがなんであろうと所与の戦局において最適なアクションを起こすことを求めているわけで、そのあたり今回の遠藤はいまいちフィットし損ねていた印象です。まあ代わりに入った勇人も決して輝いていたわけではないですけど。
ボール支配率が高かったこともあって守備面ではあまり危ないシーンはありませんでしたね。特に啓太のカバーリングは見事。闘莉王は上がりすぎ。CFWかよ。たしかにセンスも得点感覚も非凡なものを持っているけど。坪井は今回は足攣らなかったね。でもこの程度の相手だったら、攻撃におけるビルドアップにも積極的に絡んで欲しいところ。駒野は前半だけだったけど、こちらももっと積極的に行って欲しい。せっかく両足で蹴れるんだから、機を見て逆サイドに大きく振るとか。今回の交代はたぶん消去法で羽生と代わったんだと思うが。加地は良かった。SBながらじゅうぶん攻撃に絡んでいたと思う。
中盤についてはさっきも書いたとおり、阿部と啓太が攻守に効いており、オシムの信頼を得ていると思う。遠藤は本来のポジションではないけれど、ああいうところでも実力を示さなければ、またサブ扱いされかねない。三都主はアシストは見事だったけれど、その他はいまいちだった。ドリブルにせよクロスにせよ高い能力を持っていることは誰もが分かっているのだから、ああいう膠着した状況でこそ、より頭脳的かつアグレッシブにプレイして欲しい。そして後半から入った羽生だけど、みんな書いてるように彼は本当に良かった。停滞した試合展開にあって、羽生の動きだけがすごく滑らかに見えた。次はぜひスタメンで、御大の弟子達との「閃くコンビネーション」を見たいね。
FWの2人は、残念ながらNot His Dayだったなあ。巻の高さも達也のドリブルも、引いた相手に対して有効ではあったのだけれど、どうにもチャンスに決め切れなかった。寿人は自ら双子同時出場の祝砲を放ったね。おめでとう。あんなわずかな時間でしっかりチャンスを決めるとは、実に頼りがいがある。というか短時間過ぎて褒めるところしかないw。
そしてオシム。今回の苦戦は御大のスタメン選択に一因があったと思う。ここはぶれずに批判もしておかないと。最初から羽生らを入れていればもっとスムーズに進んだのでは?まあこういうプレイを御大は求めているんだっていうメッセージかもしれないが。御大への信頼はそうそう揺るぎはしないし、ずっと期待もしているから、ぜひとも選手はそれに応えて欲しい。
最後に少しだけ思ったこと。御大が求めている「考えて走る」とは、動きを持った相手を打破するために走るばかりでなく、動かない相手を切り崩すべく走ることで攻撃の端緒を作ることも含むと思うのだが、イエメン相手にそういう走りを見せるシーンはあまりなかったと思う。言うなれば、相手選手に対する能動性ではなくて、状況や戦局に対する能動性。陣形の急所を突くために「走る」だけでなく、陣形に綻びを作るために「走り出す」。スムーズに攻めるために、そういうスペースメイクの動きをもっともっと意識して欲しいと思った。