こんな時期に正社員の解雇規制緩和を打ち出したら

消費マインドの冷え込み方は生半可なものじゃないでしょうね。少なくとも消費税の増税と同じくらいには。
かつてマスメディアにおいて「リストラ」という言葉が賑わっていたころ、いったいどのように人員削減が行われていたか、覚えている人は多いでしょう。身内や友人知人が当事者だった人も少なくないはず。景気が沈滞している今般の時勢にあって、さらに解雇へのハードルを下げたら、多くの労働者は職にしがみつこうとしてノイズ混じりのアッピールを繰り返したり、あるいは同僚を蹴落とそうとする可能性もあります。生き残るためにはなりふり構っちゃいられません。もしかしたら家族も派遣切りや無い内定に遭っているかもしれませんしね。こぞって局所最適に走る姿が容易に想像できます。
前のエントリでも触れましたが、解雇規制を緩和するなら、それと同時に(あるいは先立って)、潤沢な失業保険の給付と手厚い就労支援が必要なはずです。太陽が現れる期待が無いのに、北風の只中でコートを脱ぐ馬鹿がいるわけもありません。正規雇用と非正規雇用の間の大きな格差はいずれ均衡に近づけるべきという考えを自分は持っているけれど、それを実行するべき時期は、十分な経済成長と各種社会保障の充実がともに成し遂げられてからの話でしょう。財政再建とか構造改革とか、マクロ経済が健康を取り戻してからの話ですよ。これ以上に消費主体たる労働者に痛みを負わせるって、冗談でもそんなプレイは御免です。「経世済民」って言葉はどこに行ったんですかね。
ついでに言っておくと、政府が積極的雇用政策に乗り出さないと、労働者は雇用の質を問うことが出来ずにとにかく就労せざるを得なくなってしまい、劣悪な労働環境が淘汰されずに延命し続けます。その点からも雇用の流動化それ自体にはメリットがあるわけで、だからやっぱり、一刻も早く景気の回復を促すとともに、フレクシキュリティを盛り込んだ積極的雇用政策なわけですよ。