"にわか"からの卒業

江橋よしのりのサッカー観戦記: サッカーを好きになるのと、W杯を見るのと、どっちが先でもいいんじゃない
江橋よしのりのサッカー観戦記: >みなさん
上記2つのエントリを読んで、自分がサッカーを好きになりだした頃のことを思い出した。
まだ小学生の時分だったか。イタリアW杯や天皇杯高校サッカーなんかのテレビ中継を見たことが、僕のサッカーの原体験だった。それから日本にJリーグができ、ドーハに代表されるアメリカW杯予選の激戦などを通じて、僕はサッカーファンになっていった。地元にJのチームを持たず、アマチュアチームに入れ込めるほどの情熱や知識もなかった僕は、いわゆる代表厨としてサポーター歴をスタートさせたのだった。
初めて生でサッカーの試合を観戦したのは、進学先である京都でのパープルサンガの試合だった。サークル活動などの都合もあり、サンガの試合に行くことは年に5〜6試合程度だったが、ホームの大半の試合はテレビ中継されていたから、しばしばテレビ観戦はしていた。サポーターと呼ぶには甘いだろうが、確かにかなりの思い入れを持って、僕は三浦カズや松井や遠藤を追いかけたのだった。それと並行するように、ナイジェリアユース、アジア杯、ハッサン2世杯、シドニー五輪、コンフェデなどの各代表チームを見続け、やはり相変わらず代表厨でもあった。その頃もう地元にはアビスパがあったんだけどね。
福岡に戻って博多の杜に通うようになり、代表のみならず欧州リーグにも多少は詳しくなって、多少は自分なりの「サッカー観」なるものができては来たけれど。サッカーを好きになる前の自分は、もちろんサッカーには詳しくなかった。多くの雑誌、テレビ観戦、ネットでの情報収集を重ねる中で、素晴らしいプレイ、精緻な戦術、美しい試合に魅せられて、少しずつ詳しくなったのだ。きっとそれは、多くのフットボールフリークが辿った道のりだと思う。初めから詳しい人とか、すぐに通になれる人なんかどこにもいない。誰だって「にわか」からスタートするんだ。
今大会で初めてサッカーに興味持った人、選手の顔と名前はわかるようになりました?とりあえず次の日本代表の試合も見てください。きっと面白い試合しますよ。2002年大会も見ていた人は、代表選手がJリーグでプレイする様子に注目してみてください。チームでもいいプレイしていますから。もっと前から日本代表だけ追いかけている人。うーん、もったいない。悪いけどそれって、ただ消費者として日本代表を見ているだけの様に思えます。Jじゃなくて欧州でもいいから、クラブの試合に注目してみませんか?クラブでこそ輝きを放つ名手だっているんですよ。
それぞれのスタイルで楽しむという考え方は、一般論としては間違いじゃないでしょう。W杯は盛り上がってるから騒ぐけどサッカーってよく分からないし興味も思い入れもないという人を、断罪しようとは僕も思いません。
ただし。サッカーに魅力を感じるかどうかはあなたの感性の次元の問題だけれども、その魅せられたものについて何かを言ったり考えたりすることは理性の次元の問題です。ろくに情熱も見識も持たない人が選手たちを単純に賞賛したり罵ったりすることを、僕は薄っぺらで醜いと思うし、またマナーに反しているとも思います。
ワールドカップは、数多くのサッカーファンが情熱を迸らせ、喜怒哀楽がぶつかり合う祝祭です。今は「にわか」と呼ばれる人も、これからサッカーを見ていけば、きっとどんどん好きになる。必ず「にわか」とは呼ばれなくなる。W杯はそのスタートにふさわしい場です。あなたの内に芽生えた情熱は、豊かな知識と理性と知性とともに、いつか解き放たれるでしょう。その時のために。どうか、フットボールに敬意を。