魔王はwin-winとか嫌いだろ

じゃあ魔王さんに問うが、魚とナマコの見ている世界は同じか? 魚には魚のペース、ナマコにはナマコのペースってもんがある。魚の見る世界とナマコの見る世界は違うのだ。別々の世界で、同じ幸せを求めても不幸になるだけだ。人間と同じ認知スケールでモノ・コトを見るから人間の価値観に引きずられ、妬ましく思ってしまうのである。まずそれをやめよ。魔王は身の程を知るべきなのである。
なぜ魔王は世界征服に失敗するのか、あるいは魔王のタイムスケールもんだい。 -

思うに、別の世界で生きるものを自分の世界で支配することこそ、魔王の醍醐味。誰もひざまずく者のいない世界を征服しても面白くないだろう。異なる価値観、異なる認知スケールの存在を支配せずして、いったい何が「征服」か。バクテリアだろうがモケーレ・ムベンベだろうが、おそらく魔王の支配欲は刺激されまい。それなりに高度な文明圏を構築した人間だからこそ、魔王にとって支配の対象たりうるのではないか。ことによればエルフやドワーフのようなデミ・ヒューマンでも文明社会を作っていれば支配したくなるかもしれない。
「こっちは幸せ、あっちも幸せ」というような世界観を、おそらく魔王は許容しない。自分の幸せのためには相手の不幸せが必要。だからきっと魔王はwin-winの関係とか好きじゃない。征服のために寝て待つこともたぶんしない。魔王の望みは、屈服させ無理やり意に従わせることだ。自分に叛く勇者など現れようものなら、魔王は渋い顔をしながら玉座の陰で小躍りしているよ。