年金制度は企業もプレイヤーです

塩崎恭久官房長官は11日午前の記者会見で、保険料を従業員から徴収しながら厚生年金に加入していなかったり、保険料を滞納している企業に勤めていた社員の権利回復策について「誠実にお支払いをされていた方々の権利を実現するというのが一番大事。法的に何が必要なのか検討していく」と述べ、これら従来未納扱いしていたケースについても給付していく考えを表明した。政府は厚生年金保険法の改正も検討する。
こうした企業が存続している場合は、厚生年金に強制加入させたうえ、保険料を徴収し給付に反映させる。さかのぼって徴収できるのは現行法上は2年間だが、この時効凍結も検討している。一方、既に消滅した企業で責任者の行方も分からない場合でも、本人の給与明細などで保険料負担が明確になれば、国庫負担も含め、給付につなげることを模索している。
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20070711dde001040016000c.html

今般の騒動をきっかけとして、年金のことをざっと調べて思うことには、年金制度もまた各プレイヤーがその役割を全うして初めて十全に機能する制度なのだなあ、ということでした。国民年金であれば被保険者たる国民と地方自治体。厚生年金であれば被保険者たる労働者とその雇用主である企業。社会保険庁自治体の職員は公務員ですからとりあえず措くとしても、少なからぬ国民や零細企業にとっては結構な労力を必要とするシステムですよね。
国民年金と厚生年金とが切り替わるたびに、別の番号と手帳を貰って保管し続ける。住所や名前が変われば届けを出し、手帳をなくしたら新規交付ではなくて再発行。そして領収書も保管。制度を理解するだけでも難儀なのに、かなりの手間を要します。企業にしてみても、その手続きによって直接利益が得られるわけでもないのに、どの企業も事務作業を完璧に遂行するかと言えば、それは不可能でしょう。別にやらなくてもいいとは思いませんが、労力を傾注する対象としてはプライオリティが低いかな、と。
ちなみに労働保険(雇用保険労災保険を合わせた呼び名)は収納率が高いようですが、これは徴収にあたっているのが労働基準監督署だからでしょう。企業側にしてみたら、労基署の機嫌を損ねて労働法関係で突っつかれたくはないでしょうからね。このあたり、実質的に強制力を持っている労基署の強みではあります。
ともかく、申請主義を採用していることと合わせても、社会保険庁という一行政機関のみに今回の件の責任があるとは思えず、制度運営についてはじっくりと熟成を図るのが筋なんではないでしょうか。たとえば基礎年金番号の導入と来年からの「ねんきん定期便」の送付によって、上記の手間はかなり省けるものと思います。今度の参院選は「年金選挙」になるっぽい雰囲気なので、あまり中身のない年金制度批判は勘弁願いたいところ。