どちらが阿世なのか

MyNewsJapan:早稲田大、サラ金業界と癒着 寄付5千万円で“御用論文”量産
リンク先は早稲田大学にある「消費者金融サービス研究所(IRCFS)」に関する記事なんですが、なんだか変な批判だなあと思う。
まず、大学など学術機関や研究所が企業から支援を受けて研究に当たることは、どこの業界・分野でもよく見られること。医療・製薬関係企業なんかでも、組織のみならず研究者個人に様々な援助を行っている話はよく聞く。私企業から寄付を受けていること自体は、批判の対象には当たるまい。それとも、1年当たり6〜700万程度の額で研究の結果を捻じ曲げられるとでも思っているのだろうか?資料を買ったりデータベースを契約したり研究の補助にあたるスタッフを雇うことを考えれば、大した額とは思えないのだが。
そもそも、経済学上の研究なのだから出された論文に関しては学術的に批判すればよい。本文中では「いずれもサラ金業界擁護派で規制強化慎重論者として知られている人物だ。」とIRCFSの研究者について書かれているが、たとえば上限金利規制問題についても多くの経済系ブロガーが規制強化についての疑問を述べたのは、記憶に新しいところ。規制強化に慎重な意見を発表しただけで「曲学阿世の徒」と言われたのでは、実学など成り立たないではないか。
この記事の論調からは、「金貸しは悪人」とでも言いたげな眼差しが透けて見える。そういう偏見の持ち主が世間にいることは承知しているが、だからといって先入観から無理筋な批判を加えても有効ではなかろう。重ねて言うが、業界の健全な発展のために業界自身が研究に出資するのはありふれたこと。むしろこの記事の方が、「金融業者憎し」という俗情におもねり、ジャーナリズムを貶めているように見受けられる。