ハイハイ、昔ベストメンバー規定に引っかかったチームのサポが通りますよ

川崎フロンターレACLのアウェーゲームからの帰国にJリーグからチャーター便を用意してもらい、にもかかわらずJリーグの直近の試合でスタメンの大幅入れ替えを行ったため、Jリーグの犬飼理事に「サポーターへの裏切り」と非難された件については、結局、犬飼理事が発言を撤回する形で決着しようとしている。
http://www.nikkansports.com/soccer/p-sc-tp0-20070927-261947.html
http://www.nikkansports.com/soccer/p-sc-tp0-20070928-262399.html
http://www.nikkansports.com/soccer/p-sc-tp0-20070929-262871.html
なぜ犬飼氏があのような非難を行ったかといえば、Jリーグ規約42条にある「ベストメンバー規定」および、「ピッコリ事件」に由来するものだ。簡単に言うと、プロサッカーチームはその時点で最強のメンバーで試合に望まなくてはならないことがJリーグの規約で定めてある。この規定はもともと明確な基準があるものではなかったが、2000年のヤマザキナビスコカップにおいて、アビスパ福岡は意図的に大量の選手入れ替えを行って試合に臨んだ。この事件は、当時のアビスパの監督の名から「ピッコリ事件」と呼ばれている。この事件をきっかけに、ベストメンバー規定は明確な数的基準を伴ったものに改められた、という経緯である。
サポが怒っている原因の一つは、このベストメンバー規定にある。各クラブには長いリーグ戦を戦う上での長期的戦略というものがあり、どの試合でどんな選手起用をするかを含めて監督の采配である。同ポジションに技術の確かなベテランと売り出し中の俊才がいてどちらを選ぶかなど、多種多様なファクターを考慮してメンバー編成は行われる。だから、リーグ側がクラブに対して「レギュラーメンバーの出場を押し付ける」ようなことは本来すべきでないのだが、ともかくもJ規約42条を受け入れて、各クラブはベストメンバー規定に従っている。
さて、今回の事件において川崎側は、ベストメンバー規定に違反していないことをJリーグ側に確認している。ルールを守っているのだから、そもそも「大量選手入れ替え」を問題にすることが間違っていよう。悪法といえど明文化されている以上は守らなくてはならないから守っている。ルールを守って文句を言われるというのは、つまりトップが恣意的にイチャモンを付けているわけで、サポが憤激するのは当然である。
もう一点。上記リンク先にも書いてあるが、犬飼氏は「サポーターを裏切ったことへの説明を求めていく」と述べている。ここがサポーターの怒りを買った大きなポイントであろう。
先に犬飼氏をちょっとだけ擁護しておくと、彼はJリーグの理事であるから、リーグ戦に臨むに当たって各クラブにより良い選手起用をしてもらいたいと考えるのは、彼の立場からすると当然である。ACLはあくまでAFCの管掌する試合であり、ACLよりJリーグを優先して考えるのは彼の仕事のうちだ。
ただし、それなら「サポータへの裏切り」などと言うべきではなかった。サポーターは常にリーグ戦を最優先に考えるわけではないからである。川崎は今季は優勝を狙うには現実的に難しい位置にいる。だからリーグ戦よりもアジアタイトルのかかるACLにプライオリティがあり、おそらく川崎サポもそのことは認めていたものと思う。ましてあのハードスケジュールでは、メンバーを固定して戦うのは明らかに愚策であり、より重要な試合にコンディショニングを合わせるのが当然。一つの負けが響くACLノックアウトラウンドの方が、今回は優先されたというだけのことである。他サポですらこれぐらいの理屈はわかるのに、犬飼氏が「サポーターへの裏切り」と発言したから、このような騒ぎになったのだ。もちろん川崎サポは、裏切られたなどとは思ってもいないのである。
私見ながら、もうベストメンバー規定は必要ないと思う。7年前のピッコリ事件ですら、多くの蜂サポはピッコリの選手起用を支持していた。当時よりさらに海外リーグの情報が多く流れる今、各クラブのサポーターはハードスケジュールにおけるターンオーバーの意義を十分に理解している。わざわざJリーグの幹部に言われずとも、どのような振る舞いがサポーターへの裏切りなのか、サポーターは自身で判断できている。パターナリズムに乗っかった発言はそろそろ控えて欲しい。Jリーグ15年の歴史は、確かにサポーターを育んだのだから。