パーフェクト・リレーを讃える

404 Blog Not Found:君たちは野球の何を見ているんだい?
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ブックマークコメントに星をいっぱい貰ったのでダイアリでも書いておく。あのパーフェクト・リレーは本当に美しく素晴らしかった。
まず先発・山井大介は、8回まで完璧にファイターズ打線を封じ込めていた。日本一がかかった試合でそれだけのピッチングを見せることがどれほど難しいことか。そのうえで、自ら降板を申し出た(参考)。その潔さ、決断力、フォア・ザ・チームの精神が素晴らしい。次に落合博満監督。日本シリーズでの完全試合という空前の記録が達成目前だった。それでも勝ちを取るために継投策に出た。投手交代せずに負けたとしても許される部類の温情采配であっただろうに。「日本シリーズでの完全試合」が100年に一度の大記録なら、それを断ち切って交代させる采配は1000年に一度の大英断じゃないか。最後にクローザーの岩瀬仁紀。先発がパーフェクトペースで24アウト取った後の、最後の3アウトが自分のピッチングに託されるという状況。もし打たれれば、チームの勝利をふいにするばかりか、落合監督の期待を裏切り、先発・山井の力投を無駄にし、日本中のプロ野球ファンから溜め息をつかれるわけだ。こんな痺れる状況はそうはないだろう。まさに「選ばれし者の恍惚と不安、二つ我にあり」。3人が3人とも、おのれの置かれた状況に対して肉体と精神をフル稼働させることで、このパーフェクト・リレーが成立したんだ。これぞチームスポーツの醍醐味。美しくないわけがないじゃないか。
そして思い出して欲しい。昨シーズンの日本シリーズ、対戦カードは同じくドラゴンズ‐ファイターズだったが、この時は第1戦をドラゴンズが制したものの、ファイターズが4連勝した。さらに言うなら2004年の日本シリーズ、ドラゴンズは先に3勝を挙げながら、6・7戦を落としてライオンズに日本一を譲った。勝てる時に勝っておかなくては勝負事は簡単にひっくり返る。落合監督は勝負師としてそれを骨身に刻んでいるはずだ。また、今年のドラゴンズはリーグチャンピオンから陥落し、クライマックスシリーズを勝ち抜いて日本シリーズに出場している。一度は逃した王者の称号、シリーズウィナーという形で取り戻したいところだ。そのチャンスが、半世紀もの長きにわたって届かなかった日本一の栄光が、すぐ手の届くところに来ている。3年前に肉迫し、1年前はアウェーで見せつけられた歓喜だ。それを地元の大観衆とともに分かち合えるのだ。こんなに素晴らしいドラマはそうはないだろう。
http://sekai-ai.com/blog/200711/entry001421.shtml
http://sekai-ai.com/blog/200711/entry001425.shtml
エントリの内容には同意できないが、これは完全試合という記録の価値がどれくらいの重みを持つのかというところでまず齟齬が出るね。2日の日記でも書いたように、自分は完全試合に価値がないとは全く思わない。ましてや日本シリーズという大舞台でのパーフェクトは偉業だ。しかし、チームスポーツにあっては何よりもチームの目的達成にこそプライオリティがある。ペナントレース終盤の消化試合でチームが目的を失っている状況なら個人タイトル争いがチームのモチベーションになることもあろうが、日本プロ野球における最大の栄誉が53年ぶりに手に入る、その瀬戸際という状況では、個人よりもチーム優先で全く構わないと思う。そもそもシーズンを通して争う「タイトル」と、その試合の中で成立する「記録」では、立脚点が異なるだろう。完全試合という稀有な記録だからこそこういう天秤が成り立つのであって、かかっている記録が「サイクルヒット」とか「無四球試合」であれば、優先されるべきはおのずと定まる。チームスポーツではやはりチーム以上に優先される個人などあるべきでないと僕は思う。
蛇足ながら指摘を一つ。

リリーバーには絶対に完全試合ができない、ということはありません。メジャーだったと思いますが、1回無死無走者からリリーフして9回を完全に抑えた投手に完全試合の記録を与えた例があります。

これは1917年のベーブ・ルースの事例だろうか。それならwikipediaに記述がある。

有名な試合として、1917年6月23日に、当時ボストン・レッドソックスの投手だった、ベーブ・ルースが対ワシントン・セネターズ 戦に先発した試合がある。この試合、ルースは先頭打者を四球で歩かせた後、審判と口論になって捕手ともども退場させられてしまう。急遽登板したアーニー・ショア投手は、ルースが出したランナーが盗塁を失敗した後、9回まで一人のランナーも出さずに投げ抜いてしまった。公式記録上はルース−ショアの継投によるノーヒットノーランである(1991年の記録見直しまではショアによる完全試合という扱いであった)。
ノーヒットノーラン - Wikipedia

というわけで救援投手では完全試合はできない。パーフェクトの成立条件の1つに「完投すること」が入っており、完投の成立条件は「先発投手であること」だからだ。(参考
あらためて言っておく。今回の采配について、「中日ファンだけが継投策を支持していて、その他の野球ファンは誰でも完全試合を狙わせるべきと考えていた。」という声があるが、それは誤りだ。勝利に貪欲で、実力を出し惜しみしないチームでなくては、日本一の座にはつけない。かつての我がライオンズがそうであり、あるいはスワローズなどにもそういう風格を感じた時期があった。落合監督の継投策も勝利への執念のあらわれだ。地元の大勢のファンとともに栄誉を分かち合うために、重圧をはねのけ、大記録を投げうって守護神をマウンドに送ったのだ。勝つべくして勝ちにいくチームこそ、シリーズウィナーにふさわしい。