履歴・保全・リコメンド

エントリタイトルを見て「愚民のみなさ〜ん!こんばんはー!!」というセリフが頭に浮かんだ一部のプロ愚民は心の中で挙手せよ(挨拶)。
さて、biblioblogger界隈で年頭より話題になっていた件だが、上記3点について雑感を記しておく。
まず発端になった練馬区立についての報道によれば、破損された資料が非常に多いためトラブル解消のために履歴を保存し活用するとの提案がなされ、それに対して思想・信条の自由及び読書の自由を侵すとの批判があったわけだが、たしかにこれを無条件に図書館側に認めるのは無理筋という感がしなくもない。ただ、図書館における資料は構成員の支出を財源とし、構成員の共有財産をレンタルする以上、資料が汚損した場合のコストを一方的に図書館側(=構成員の財布)に負わせるのは、これはこれで無理筋とも思える。要は汚損によるコストが資料費の中でどれくらいの割合を占めるのか、それが明らかになった段階で構成員みずからが履歴をそのような目的のために使用してよいか決めたらいいんじゃね?というところが現実的な妥協点という気がする。なお、現実には履歴を辿っても汚損の犯人とは確定できないのではないかと予想している。
次に貸出履歴の保存については、利用履歴を含めた個人情報が利用者自身以外に知られることが問題になるのであるから、利用者が各図書館においてユーザーアカウントを取得した時点で、ユーザーが登録したメールアドレスもしくはWeb上のマイページに自動的に貸出・返却の履歴がポストされるようにセッティングしておき、履歴情報を利用するもしないもユーザーに委ねてしまってよいのではないかと考えている。図書館資料を利用する時、「誰が」と「何を」が結びついているがゆえにプライバシー漏洩が問題になるのであって、図書館側から「誰が」の部分が見えないようにしておき、個人を特定さえされなければ、ユーザーの属性および「何を」利用したかの情報は、データマイニングの対象としてもよいのではないか。
最後に資料のリコメンドだが、これは上記の利用履歴の活用ができるかどうかで変わってくるだろう。履歴を活用できるならAmazon並に個人にマッチした資料を推薦できるが、履歴が活用できないor不十分な場合、ユーザー個人ではなく資料に資料をマッチングさせて推薦ということになるのではないか。「この資料と同じ分野ではこちらの資料が人気です」「この本の著者はこんな本も書いています」というような。無論そのようなオススメ機能すら「図書館からの押し付け」として反発する向きもあろうが、嫌な人はその機能を使わないでおけば済む話であって、サービス提供側としてはとりあえず機能を用意したうえで利用者に判断を任せてよいだろう、と考える。少なくともAmazonや他の書店・出版社がやっている程度のリコメンド機能は装備しておくべきだろう。
前エントリで書いたことと多少重なるが、多くの人にとっては図書館もまた「余技」としてしか認識されていないと思っている。その認識の正否については別途論じるとして、現実に軽く見られているとしたら、少しでも重用されるようにクオリティを向上させるのが道理だろう。「精神的に向上心のないものは馬鹿だ」とさえ言われなくなる前に、危機感を持ってサービスに打って出るべきではないのか。期待されなくなったら本当に終わりですよ?