竹中平蔵氏の議員辞職について

9月24日付の西日本新聞の春秋(朝刊1面コラム)で、次のように書かれておりました。

竹中平蔵総務相参院議員を辞職し、大学に戻る。小泉内閣が終われば「政治の世界における私の役割も終わる」と記者会見で語った。小泉首相は「ご苦労さんでした」とねぎらった。
スカウトしてくれた首相の退陣に自分の引き際を合わせる。そういう身の処し方もあるらしい。「小泉内閣の最初から最後までご一緒できたことは私にとって誠に光栄なことでした」と語った時は目が少し潤んで見えた。
などと竹中氏に合わせるのはここまで。議員バッジとはそんなに軽いものなのか。バッジを着けて2年とちょっとしかたっていない。参院議員の任期は6年だからまだ4年近くも残っている。
竹中氏に票を投じた人たちのことをお忘れのようだ。しかも自民党比例代表では最高の72万票を獲得している。託された6年の任期に勝手に見切りをつけていいはずがない。批判の声が自民党内からも出ているのも当然だ。
5年前、小泉首相に民間閣僚として起用され、改革の旗振り役を務めた。大手銀行の不良債権処理を進めた手腕はなかなかのものだった。だが議員になった後に就いた閣僚としての仕事を含め、中途で終わることがいくつかある。
経済財政担当相、金融担当相、総務相…。ずっと閣僚のいすがあてがわれてきた。いすは安倍内閣では多分ない。ならばここらが潮時、と判断したのだろう。そう思わせる人に「ご苦労さんでした」とは国民はまいらない。
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/column/syunzyu/20060924/20060924_001.shtml

まことにそのとおりと言うべきでしょう。竹中氏が民間人ならば、「引っ張ってきた首相が辞めたので私も辞める」と理解できるのですけれども、彼は2004年の参院選挙に出馬し、自民比例でトップ当選しているのですよね。つまり単なる学者大臣ではなく、国民の信を託された政治家であるわけです。6年間の任期を全うすることが前提で議員となったはずなのに、途中で放り出すとはどういう了見なんですかね。

自民党公認参院選比例代表からの立候補を決めた竹中平蔵経済財政・金融担当相は22日の記者会見で「(任期の)途中で辞めることはあり得ない」と言明、当選した場合には仮に閣僚を退任しても任期満了まで務める決意を表明した。出馬の理由については「国会議員という重い立場で汗を流し、改革をさらに強く進めたい。たたかれても、たたかれても改革ということだ」と強調した。
NIKKEI NET 2004年参議院選挙特集

上記のとおり、2004年参院選に出馬した際には、大臣は辞めても議員は辞めないと明言していたわけですね。一方で、2001年に大臣を引き受けたときから、小泉首相退陣とともに政界から身を引くつもりであったとも言っています。

しかしながら、小泉内閣の終焉をもって、政治の世界における私の役割は終わるというふうに思います。大臣をお引き受けした時点から小泉内閣とともに自分のこのような公職の仕事は終わるというふうにずっと考えておりました。
(中略)
問:大臣、その決意を固められたのは、改めていつだったでしょうか。
答:基本的な考え方は先ほど申し上げましたように5年半前に小泉総理から就任の要請を受けた時から、私の政府の中でのこういう形での公式な仕事というのは小泉内閣とともに終わるというふうにずっと考えてまいりました。
ただ小泉内閣の終焉が近づくとともにそれについてより具体的に考えるようになりました。どのタイミングでこのことをお話しするのが一番よいかなというふうにも思ったのでありますけれども、あと残すところもう10日ぐらいになりまして、皆様に御礼を申し上げるという意味でもそのことを今日の時点で明確に申し上げるのがよいかと思いました。
問:大臣、以前は参議院議員の任期途中の辞任について否定されていたと思うのですが、このことについてはどのようにお考えでしょうか。
答:まあ、人事、任期の話に関しては、そういう言い方になるのだと思います。

竹中総務大臣閣議後記者会見の概要 平成18年9月15日

つまりは、初めから二枚舌によって国民を騙して、議員になったということですか。しかも悪びれもせず退任時に告白とは、いったい民主政治や国民の信任というものを何と考えているのだろう?ハッキリ言って国民は舐められていますよ。bewaad氏もこの件について3度エントリを起こして述べていますが、国民はもっと怒っていいはず。またマスコミにしても、これはしっかり取り上げて批判すべき案件でしょう。竹中氏の振る舞いは議員の仕事を貶めているわけですから。同じ学者出身ということで言うなら、2001年参院選でトップ当選して以来、要職に就くでもなく6年の任期を務めあげようとしている舛添要一氏のほうがよほど確かな見識を持っていると言えます。こういう悪質かつ不誠実な公約破りがまかりとおる限り、現政権の「美しい国」などというフレーズも夢物語で終わるでしょうよ。