やっぱり人口統計の話か。

厚生労働省の会見録に出ていたので、長くなるがメモしておく。

(記者) 野党から批判が強まっていますけれども、この問題について、改めて今後どう対応されていくのか、閣僚としても、少子化をあずかる省のトップとしても、資質を問う声も強まっております。どう対応されますか。
(大臣) これは、国会審議を通じて、私の悪いところは悪いと、それから、私のこれについての考え方というものがどういうものかということをよく説明をしまして、理解を求めていきたいと、これが基本的な私の考え方でございます。
(記者) 野党が党首会談を開いて、大臣の辞任要求をするということのようですけれども、大臣の受け止めはいかがですか。受け止めと対処方針ですね。
(大臣) 先ほども申したように、野党の皆さんにも、私は修正したものですから、修正をしましたということ、それからまた、その背後にある考え方は、決して一般的にそういう考え方を持っているようなことは一切ないということをご説明をして、理解を求めていきたいということでございます。
(記者) 謝罪して済む問題ではないという声が、野党から強く出ているんですけれども、そういうことについては、大臣はどういうふうにお答えしていくつもりでしょうか。
(大臣) もし、この発言を、人口推計という特殊な、技術的な説明を要する分野以外で、一般的に使ったということであれば、これは本当に私は申し開きができないことだと思うんですけれども、極めて技術的な人口推計の説明をする時に、できるだけわかりやすくしたいという一念で、ついこういう言葉を使用してしまったということで、それをしながら、すぐ撤回と言うか、これは良くないということで、その場で申し上げたのですが、おそらく修正をすれば、あるいは撤回をすれば、済むという問題ではないというのは、私が一般的にそういう考え方を持っているというような見方というか、そういうことではないかと思います。私は全くそうではないわけでありまして、その点をよくご説明をして、理解を求めていきたいと、こういうことです。
(記者) 一人の女性にがんばって産んでもらわなくてはならないという発言もあったんですけど、子どもを産むということは極めて個人的な問題なので、少子化対策の中でも、そのへんの表現をすごく気をつけて、産めよ増やせよというような昔のそういうことをなるべく国民に押しつけないようにという形で慎重に進められていたんですけど、一人頭がんばって産んでもらうしかないみたいな発言の真意というのは、何なんでしょうか。
(大臣) これも全く同じで、何と言うか、人口推計をやる時に、ある年に生まれた女性が、生涯を通じて子どもを産んでいただく、そういう数を、統計的にですよ、個人個人の問題ではなく、統計的に出して、合計特殊出生率というものを各年度に出すということになっているのですが、その合計特殊出生率を上げるということはどういうことを意味するんだということを、ああいう表現で、その方がわかりやすいかと思って、したということなんです。ですから、全く統計的、技術的な問題として述べたということです。今のご質問に答えるとすれば、そういう答えであります。
(記者) その一人頭でがんばってもらわないと、年金をはじめとした社会保障が危ない、
(大臣) 経済成長。
(記者) あるいは経済成長ができないというような趣旨で発言された。
(大臣) はい、そうですね。
(記者) それは人口と統計学の何、の中で言われた。
(大臣) 人口統計のことで、だからそれは統計的な一つの事実として言っているのであって、しかしその統計的な事実を望む姿に実現するためには、これはもう政策は先程ご指摘があったように極めて人間のいろんな諸側面、これは感情を含め、また経済的な条件を含めて、そういう諸側面に最大の配慮をしながら政策を編み出していかなければいけない。これはもう大前提でありますね。だけれども、その前の統計的なことを、日本の人口というのを、やはりみんな関心を持っていることですから、それについてやや難しい説明ですが、敢えてわかっていただきたいと思って説明したときのもろもろのことであります。
(記者) 今回、労働の法案とか重要な法案がいくつか出て、少子化関連の今大事なときだと思うんですけれども、それは行政、政治への影響についてどう考えられていらっしゃいますか。
(大臣) これも、要するに少子化対策、それから家族対策というようなことで、やっていくわけですけれども、その基になる我々の統計というのは、希望が叶えれられた場合の仮定計算という人口統計を出すわけですけれども、この人口統計から具体的な政策を考えるというプロセスをたどっていくことになります。今の人口統計は希望が叶えれられた場合はということなんですが、その前の私の説明というのは、その前の通常の人口統計で、それから希望が叶えられた場合の人口統計というようなことで、希望が叶えられた人口統計というのは、やはり、それは出しっぱなしの人口統計からさらにいろんな政策的なことをやって希望を満たす。それぞれの女性が希望を満たすということを政策課題にしていくと、政策の目標にしていくと、こういうことでありまして、出しっぱなしの自然体の人口統計と希望が叶えられた場合の人口統計との間をどうやって埋めていくか、ここが政策的な課題だし、政策指標が区分を要すると、こういうアプローチでいくわけですね。
(記者) 今回の発言で、批判が強まっていて国会運営あるいは、厚生労働省の大臣への信任という、国民の信任という意味でも、そこはいろんな批判が出ているわけですけれども、そういう行政を預かる行政への、今後の行政への影響をお尋ねしたい。今回の発言で。
(大臣) それはまた元に戻るんですけれども、私がその基礎になる人口統計の説明をする際、大変不適切な表現をしたということは、これはもう申し訳ないことで、その点についてはお詫びをします。しかし、私が女性の方々について、私がその時に使ったような表現でこの一般的に捉えているなんてことは、これは金輪際ないということを説明し理解を求めていくと、それが基礎だろうと思いますね。
(記者) 今回の大臣のご発言で、安倍内閣全体への支持率がまた下がってしまうのではないかという話がありますけれども、それについては。
(大臣) もしそういうことがあれば、本当に残念ですし、大変申し訳ないと、こういうことです。ですから、過ちは過ちとして、しかしこれから人口統計の問題も議論せざるを得ないんですね。そういう過程でだんだん私の間違った表現、これは何回謝っても足りないくらいなんですが、しかし、私の言わんとしたところ、ということはおいおい理解をしていっていただきたいなということです。それは2030年までの人口というのは何というか、だいたいケリがついてしまった。これからももちろん人口というのはだいたい決まってしまっていても、出生率が去年1.29まで伸びました、結婚も多かったし、出生も多かったということで、今後努力は出来るんだけれども、基本は2030年以降に、沢山子どもが産まれるような政策を採っていきたいと、これは基本のフレームワークなんですね、政策を考えるときの。そういうようなフレームワークのもとで、いろいろ考えていくということでありまして、そういう説明をしたり、あるいは政策の努力をすることによって、表現はもう全然私申し開きが出来ない程まずいし、不適切なんですが、ああそういうことだったのと。今は、若干私から言わせていただくと、人口推計の時の話ということ、人口推計ということが切り離されてしまって、私が一般的に女性に対してそういう考え方をしているというように取られてしまっている。これは本当に私の不適切な発言ですから、ここでどうこうそれを皆さんに申し上げ、どうこうというわけではないのですが、そういうプロセスの中で私としては、望むらくはおいおい私の考え方についても理解が深まっていってくれたらありがたいなと、そのために一所懸命やると、こういうことですね。
(記者) もう一度確認ですけれども、希望が叶った場合のときの人口推計という、希望というのは誰の希望なんですか。
(大臣) その希望は、同じく社会保障人口問題研究所がアンケートで一種の世論調査をやっているんですね。その人たちの答えが、若い人を相手に世論調査をしたんですけれども、結婚したいという人たちが非常に高率である。それからまた、子どもは何人くらいがいいですかと、結婚した場合何人くらいがいいですかという質問に対しても、本当に2人以上のというような傾向がアンケートで出てきているわけですね。そういう希望が叶えられる社会を我々は作っていかなければいけないわけですが、そういう社会を作ることによって希望が叶えれられていくとしたら、どういう人口のこれから動向になるかと、いうことをやろうとしているんですね。
(記者) 国家や制度の希望でもあるんでしょうか。
(大臣) 国家や制度の希望ではなくて、その人たちの希望が叶えられればということです。
厚生労働省:平成19年1月30日付閣議後記者会見概要

自分は講演を聞いたわけではないから、実際の発言の詳細は知らない。しかし、こういう文脈で行われた発言が、あのように一部を切り取られてフレームアップの様相を呈するのはいただけない。玄倉川氏が「現代のラッダイト運動」と評しているが、この見方に同意しておく。
それにしても、この記者会見の記者の質問もいまいちだなあ。政局じゃなくて政策の話してくれんかな。
(追記)
しかしこの文脈なら機械の比喩はなくてもいいな。合計特殊出生率を上げなきゃならんという話でしかない。別にレクされたわけでもないだろうから、勉強に使った書籍なり論文にそういう理解の仕方が書いてあったのかも。