日銀利上げ

各種分析については詳しい方がそこここでエントリを上げているのでそちらを参照。僕のブックマークにも幾つかあるので。テレビのニュースを見ていたら利上げに肯定的な声が多くてちょっとびっくり。預金者は金利が上がるからありがたいと言われたって、金利生活者のメリットよりローンを抱えたor考えているサラリーマン世帯のデメリットのほうが大きい気がするが。好景気が続いているといっても中身はお寒いものだし、不況局面においては資金力に勝る大企業のほうが有利だから、中小企業の先行きも心配。実際、以下のような報道もある。

資金調達を金融機関からの借り入れに頼らざるを得ない中小企業の間では、利上げに伴う貸出金利の上昇を警戒する声が強い。大企業に比べて景況感の改善も遅れている。大阪商工会議所西村貞一副会頭(サクラクレパス社長)は「この時期の利上げは中小企業の体力をそぐ」と日銀を批判している。
中小は貸出金利上昇を警戒・日経経営者緊急調査

あと、首相は「金融政策は日銀の専管事項」って正論を述べているけど、その金融政策によってまたデフレが深刻化したら結局は内閣に批判が来るわけで、そのあたり今後の舵取りは要注目。1月利上げのときは何とか止めたし、これからしばらくは追加利上げは無いという見込みがあるから今回は日銀の顔を立てたのかもだけど、それならそれで一人反対の声をあげた岩田副総裁の内心はいかに。
あ、各種報道では東京新聞の昨日の社説が読みやすかったと思います。

日銀が利上げに踏み切った。景気と物価が微妙な段階で、時期尚早の決定だったのではないか。景気の腰折れを招かないか、心配だ。加えて、今回は金融市場との意思疎通の面でも問題を残した。
二〇〇〇年八月の悪夢が頭をよぎる。当時は政府の反対を押し切って、ゼロ金利を解除し、結果的に景気が後退し、翌年にはゼロ金利に逆戻りせざるを得なかった。
今回、政府・与党は総じて静観の構えを崩さなかった。しかし、本音では利上げに反対の意見が少なくない。夏の参院選への悪影響を心配する向きもあるが、なにより景気指標が強弱入り乱れていたからだ。
たしかに、先に発表された昨年十−十二月期の国内総生産(GDP)速報では実質4・8%成長、名目では5%成長という高い伸びを示した。福井俊彦総裁をはじめとする執行部は速報値をみて「景気は大丈夫」と自信を深めたのだろう。
だが、景気の実態にはひよわさが残っている。賃金の伸び悩みを背景に、個人消費は事実上、横ばいにすぎない。物価もほとんど上がっていない。生鮮食品を除く消費者物価上昇率は十二月に前月比で0・1%下落し、一進一退だ。原油価格が下落しており、先行きはむしろ弱含みで「再び下落基調に転落する」という予想もあるほどだ。
下手をすれば、デフレ克服どころかデフレに逆戻りすらしかねない。インフレ懸念が差し迫っているとはいえないのに、なぜ利上げなのか。むしろ消費者物価上昇率が0%に近い現在の水準を心地よい物価安定と考えているのだろうか。日銀はきちんと説明する責任がある。
日銀執行部の中でも、経済の専門家である岩田一政副総裁は利上げに反対の一票を投じた。総裁と副総裁の間で意見が分かれたのは異例である。票数以上に、副総裁の反対票が示す意味は大きい。
金融市場は利上げと先送りの予想が半々だった。日銀が市場に利上げを織り込ませながら結局、見送った一月の痛い経験からか、今回は日銀からの積極的な情報発信もなかった。結果的に、今回は一部の市場参加者を驚かせる決定になった。
そんな「だんまり戦術」は本来、市場との円滑な意思疎通を図って、なだらかな金利水準変更を目指す金融政策のあるべき姿とは相いれない。市場には「日銀が何を根拠に金利を動かしているのか、分からなくなった」という声もある。
景気が後退すれば、日銀に結果責任が伴うのは言うまでもない。
日銀利上げ これで景気は大丈夫か