自己研修は労働時間に入るか?

「医師 自己研修 勤務時間」という検索ワードで当ダイアリに辿り着くお客さんが多いのですが、うちではそんなこと書いてませんよ(笑)。なので少し書いておくと、一般的には、自己研修が労働時間に見なされるとは限りません。医師の研修というと、PubMedで論文を探したり、あるいは結紮のトレーニングなどをイメージしますが、そういったものが「使用者の指揮命令下で提供される労務」と言えるものなのか、ちょっと微妙ではないでしょうか。
例えば外国人のお客さんが多いからという理由で僕が勤務終了後に駅前留学したり、PCでの作業が多いからパソコンスクールに通ったりしたとしても、それらの自主的な勉強は「仕事のうち」には入りません。その勉強が使用者から指示を受けて受講したものでない限り。
これは労働法制ではよく聞かれる論点のひとつで、行政通達によると「労働者が使用者の実施する教育に参加することについて、就業規則上の制裁等の不利益取扱による出席の強制がなく自由参加のものであれば、時間外労働にはならない」ということになっています。つまり、使用者側から研修への参加を命じられたり、参加しないと不利益を受けるかのようなメッセージがあったりするのでなければ、参加の諾否が労働者側に決定権があるので、労働時間とは見なされません。
これを医師の場合に引き付けて考えると、自身が受け持っている患者や手術を担当することになっている患者のための勉強であれば労働時間と算定できるでしょうが、そうでない場合はあくまで個人的なスキルアップや知識向上が目的と見なされるので、労働時間と算定するのは難しいんじゃないかと思います。実はこのあたりはホワイトカラー・エグゼンプションとも絡んでくる論点ですけれども。
医師の過重労働は長いこと問題になっているわりに改善が遅々として進まないところではありますが、つい昨日も中原利郎医師の過労自殺が労災と認められる判決が出たばかりですし、過重労働の実態をシンプルに訴え続けていった方が理解は得られやすいような気がします。