医療と過失

同学会によると、「故意、悪意、または患者の利益に即さない目的で行われた医療等に起因する事故」は「正当な業務の遂行」ではないが、患者の利益を第一義的な目的として診断や治療などを行った場合は、「正当な業務の遂行」であるとしている。
同学会は、医療行為は人の死や傷害に直接かかわること自体が業務である「極めて特殊な分野」としている。その上で、医療行為に業務上過失致死傷罪を適用することが不合理である根拠として、(1)業務内容が持つ本来的なリスク(医療の不確実性)、(2)適正な診療の非普遍性と過失認定の困難性、(3)応招義務と善意の行為、(4)刑法の目的(応報)との齟齬(そご)――を挙げている。
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/14811.html

素人意見で恐縮ながら、と前置きしておいて。医療行為というのは恒常的に患者の身体・生命を侵襲する営みである、と理解している。特に外科なんか切らなきゃ話にならんわけで、医療行為は身体の侵襲も業務の内に含み込んであるものだと。であれば、程度の軽いあやまちについては業務上過失致死から外すという判断は実益に叶っている気がする。
一方で、これを非医療専門職の側から見ると、「医療分野だけ刑事責任の範囲を狭くする不公平な政策」と受け取められる可能性がある。その考え方自体は無理もないことであって、よその専門領域など所詮はブラックボックスである。ブラックボックスブラックボックスでなくする、という方向性はさすがに無理であろうから、ここで医療分野に求められているのは、医療事故についてより積極的にアカウンタビリティを果たし、ブラックボックスのままで信頼性を保つようなしくみであろう。自浄作用があり、それを積極的に社会に知らしめている、という姿勢が見えていることで、医療という職能は信頼を得られるのだと思う。