休ませられないなら辞めればいいのに

端的に原則論を述べよう。個々の会社が就業規則によって定める所定労働時間は、労働基準法が定めるところの法定労働時間の枠内に収めなければならない。もしも処理すべき業務の量が恒常的に週40時間の枠内に収まらない場合は、たとえば変形労働時間制の採用により一時的に週40時間の枠を超えて業務に就かせることができるが、それとて1ヶ月なり1年間という期間に均してみればまっとうな労働時間数になることを前提とする制度だ。法定労働時間の枠を超えて業務に従事させることは本来イレギュラーであり、実態として超過勤務がどれほど多く発生しようとも、それは縮減されるべきという社会的合意があるからこそ各種労働法制は成り立っている。各経営者はそれに従いつつ手腕を振るうことを要請されているのだし、裁量労働制ホワイトカラー・エグゼンプションですら従業員の健康や安全に配慮しつつ勤務に従事させることを求めている。
従業員に恒常的に超過勤務を強いなければ経営を廻していけない、会社を維持できないような経営者は無能である。どれほど他の能力が優れていたとしても、労務管理における基本的な感性が欠落しているのであれば、経営者失格である。従業員に適度な休息を確保しつつ会社を維持・成長させることが経営者に課せられた社会的責務である。その両立が困難なのであれば、すみやかに後進に道を譲るがよろしかろう。