昨日のエントリについての補足

当方にコメントやTBは寄せられておらず、先方も反応を期待してはいないでしょうが、やはりスルーすべきではないかなと思いましたので。

■[web]私の同級生は酒酔い運転に轢き逃げされ、さらに後続車両に轢き逃げされ、死んだ。そして加害者は執行猶予という判決だった。下記文章を参考にすると、飲酒運転の重い罪刑が原因となった可能性がある。

さて、飲酒運転により人身事故を起こすと、普通の事故よりも重い罪になることを加害者は知っています。だからそういった事故が起きた場合、事故後に介抱したり救急車を呼んだりせず、逃げ延びようとする者が出ます。悪質なケースでは、その後に大量に飲酒し、事故時は素面だったが事故後に飲酒したかのように証拠隠滅を図ろうとする者もいるとのこと。さて、もしこれが素面での事故であれば、加害者は逃走しなかったかもしれません。過失による軽い罪だけは覚悟した上で、人道的に処置を行い、そのおかげで被害者が生存できた可能性もあります。つまり、ただの過失事故と飲酒による過失事故では刑罰に大きな差があるため、死ななくてよい被害者が死んでしまったというケースを想定できるわけです。

しょせん可能性を重ねての推論ではあるけれど、事故や犯罪が起きるにつけてとにかく厳罰化によって防げると主張する輩にも、そのような可能性を念頭において議論してもらいたいと思います。--http://d.hatena.ne.jp/rajendra/20060830/p1

 ああ、つまり、飲酒による轢き逃げが、もっと罪が軽ければ、私の同級生も轢いて直ぐに通報され、病院に運ばれ、助かった可能性がある、のね。可能性を重ねての推論。轢き逃げされた挙句、執行猶予刑であって、彼の母親はかなり参っていたけれど、ということは、法改正前の話になるのかな。

 加害者は自営業で、つまり免職も停職も懲罰はなく、しかも当時、業務上過失致死、の最高懲役5年、それでもって轢き逃げされた。逃走せず、人道的な処置を行なわせるためには、どのくらい刑を軽くすればよかったのだろう?
2006-08-30

当方のエントリの趣旨は、厳罰化しさえすれば飲酒運転による交通事故を防げるのではないかという一部の世間の声に異論を唱えたものであり、刑罰を軽くしても全ての轢き逃げ事故を防ぎきることはできないでしょう。もちろん、罰を極端に軽くすれば、すなわち通報することによる加害者のデメリットが少なくなれば、轢き逃げが少なくなる可能性はあります。しかしながら、そこまで罰を軽くすれば交通秩序が大きく乱れることは容易に予測できることで、そのような政策を支持する人間が多数派になるとは思えません。また、普段の生活でどれほど思慮深い人間であろうとも、咄嗟の事故の際に思わぬ行動を取ってしまうことはままあるわけで、車が存在する限り、車による轢き逃げ事故を根絶することはおそらく不可能でしょう。
おそらくREVさんの示したケースは法改正前のことであると思いますが、あえて冷酷に申し上げるならば、罰の軽重によらず交通被害に遭うケースは常に一定数あります。僕も近しい人間を事故によって失った経験があり、往事の周囲の人々、特に御家族の悲しみが筆舌に尽くしがたいものであったことを記憶しております。結局のところ、残された者としては、善悪は別にしてその事故はまさしくそのような不運なものであったのだと、どうにか受け入れていくしかないのではないでしょうか。運命と言うといささか陳腐ですが、我々は些かの偶然性からも免れて生きることはできないのですから。
最後に戯言を申し上げるなら、REVさんのように後々までもその死を悼み、思いを起こす友人を得たことが、故人にとってのせめてもの慰めであると思います。