住民基本台帳カード

 写真付き住民基本台帳カード住基カード)を不正取得し、悪用する事件が全国で相次いでいる。暴力団関係者が他人名義の住基カードでクレジットカードを作ったり、偽の身分証として使われるケースなどが後を絶たない。警察当局は「偽造運転免許証と同様に組織犯罪に使われる可能性は今後高くなる」と警戒を強めるが、総務省は「不正取得の防止策は取っているのに…」と頭を抱えている。
(中略)
総務省は不正取得の防止策として、運転免許証など顔写真付きの証明書や、自宅に送付される「照会書」とともに保険証や年金手帳などにより本人確認を厳格化するよう自治体に求めている。自治体も住基カード発行の際、本人確認用の照会文書を証明書に記載された住所に郵送。申請者が文書を持参するとカードを交付する。
だが、金容疑者はこうした防止策をかわそうと、あらかじめ住居を借りて偽の住所を用意。転居したように見せかけ、新しい住所に照会書を郵送させ、カードを不正取得したという。
自治体は、申請者に複数の質問をするなどして本人かどうか確認しているというが、それでも不正に取得されてしまうのが現実。総務省は「住基カードは届け出を信じるという『届け出主義』で成り立っている。不正取得を防ぐ対策はすべてやり尽くしており、何か妙案があればいいのだが…」(市町村課)と困り顔だ。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/crime/26503

住民基本台帳カードの不正取得が多発しているという話。制度というものは悪用されうるもの、もしくは悪用する人間が必ずいるもの、という観点からすれば、届け出を信じる「届け出主義」なんて考え方はいささか危険だろうとは思うものの、役所の窓口運用を精査すれば、こういう利用者の善意に拠っている制度は少なくないのではとも。厳密な「本人確認」が簡単でないのはわかるが、悪用者に対する厳罰化を行ったうえで、よりいっそうの厳重なセキュリティを構築できないものだろうか。適正に運用されるなら、事務処理のコストダウンおよび住民へのサービス向上は確かだと思うのだが。
ちなみに写真付住民基本台帳カードは、日本の公的機関が発行する最も簡便な身分証明証とみなすことができる。なぜかというと、例えば運転免許証は顔写真・氏名・住所が記載されてあり、非常に有益な身分証明証であるが、「免許」である以上は誰にでも取れるものとは言えない。健康保険証には顔写真がないため、所有者の本人確認に不安が残る。パスポートは本籍地だけで住所表記がない。その他カード類はほとんどが免許証・保険証・パスポートのいずれかを本人確認の根拠として作成するものであるから、写真付住民基本台帳カードはこれら3大IDカード以上に簡便であるはずだ。イマイチどころかちっとも普及していない感があるが、セキュリティを確保し、もっと安心して使用できるようになることを願う。
(追記)自分で読み返して「誰か似たようなこと書いてた気がするなあ」と思って検索してみたら、霞が関官僚日記にありました。恥ずかし。