なんとなく少子化の話を

少子化の議論が盛んなようなので乗っかっておくが、実は少子化対策について政府が出来ることというのはあまり無いと思う。もともと子供を持ちたくないとか結婚もしたくないとか考えている人の価値観を変えさせることは非常に困難だからだ。「子供を持ちたいが事情や理由があって持てない」という人に対してその困難を取り除くこと、例えば経済的な困窮状態を解消することなどが、実際には求められるだろう。
ただちょっと怪しいのは、第1次ベビーブームは1947〜50年に起こっているが、戦後の高度経済成長は1950年代半ば以降のものであり、5年前後のタイムラグがある。つまり貧困状態にあるから子供を作らないという理屈は常に当てはまるわけではない。むしろ貧困家庭であっても、子供は10数年もすれば労働力として立派に家計を支えるわけで、先行投資とみることだってできる。たとえ満足な教育は受けられなくとも。
今の日本のように高学歴者が増え、またメディアも発達している社会だと、子育てに関するコストやリスクの高さ、言うなればネガティブな情報が多く流通する。ポジティブな情報も同じく流れるだろうが、我々はどうしてもネガティブな情報をチェックしてそれに備えたいという欲望があるし、情報を流す側も人々が欲しがっている情報を多く流せばそれだけ利益になるから、実際にはポジティブな情報よりネガティブな情報が多く流れるというわけである。*1
そのように子育てのコストやリスクの高さを聞かされたら、若い世代が子育て自体から距離をとろうと思うのは自然なことであって、少子化は将来に不安が多いこと、言い換えれば期待が持てないことの表れと捉えていいんじゃないかと思う。高度成長以前の戦後復興期は今よりは貧しかったが、今のように右肩下がりではなかったわけだから。
経済成長を進めて就労不安や生活不安を解消するのはもちろんだが、合計特殊出生率は下がっているが既婚者の出産率は下がっていないという話はよく聞くところではあるし、安心して結婚に踏み切れる方向で施策を講じるのが吉ではないかな。具体的な解は持ち合わせていないのだけど。
(参考)
なぜ子供が減ったか - hasenkaの漂流記
なぜ、出生率は上がらないのかなんてわからない - ほぼ足りて、まだ欲
(追記)
以下メモ。1年前の議論なのな。

477: 名無しさんの冒険  2006/02/17(Fri) 21:05
結局、少子高齢化はファンダメンタルに影響あるの?ないの?
 
478: 銅鑼衣紋  2006/02/17(Fri) 21:22 [ va4qsJNk0c ]
>>477
もちろんあるよ。というか、人口とその構成は、もっとも基本的なファンダメンタルズそのもの。影響もくそもない。
 
479: 名無しさんの冒険  2006/02/17(Fri) 21:25
どういう影響があるのでせう
 
480: 銅鑼衣紋  2006/02/17(Fri) 21:41 [ va4qsJNk0c ]
>>479
1)経済成長率=労働人口(x正常な労働力化率)成長率+技術進歩率だから、技術進歩
率が上がらなきゃ、当然成長率は下がる。一人当たり所得水準は技術進歩率できまるか
ら、いわゆる生活水準が下がるわけではないが、国内市場が相対的に狭くなるから、貿易
財でない場合、やはり規模の利益は追求しにくくなるだろう。若者向けファッション産業
とか学習塾、大学などはかなり深刻な影響を受けるでしょう。


2)年金問題が深刻になる。非稼働人口の稼働人口に対する比率は、高齢化で上がり、
少子化でさがるので、あまり変化はしないだろうが、年金は高齢化で直撃受けるのは
間違いない。現在の給付水準を維持するなら勤労世代には実質増税と同じ負担増になる
し、給付減らせば高齢者は遺産を減らすし、子供への教育支出などを減らして対抗する
ことになる。この結果貯蓄供給が減少し、資本コストの上昇を招き、民間設備投資が
減少する。これによって、生産性上昇率も低下する懸念がある。また、それが現実の
問題になる将来にまだ巨額の財政赤字があると、この傾向に拍車を掛けるので、やはり
増税ということになる。


ともかく、急激な少子高齢化の進行は、やはりヤバイのは確かだが、今すぐ対策が効果
を発揮しても、成果が目に見えるのは20年後以降だから大変。


あと、女性の社会進出はますます拍車がかかる。大学で言えば、人文系の学部は大変に
厳しい状態になるだろう。
http://www.ichigobbs.net/cgi/15bbs/economy/0076/

*1:相対的にポジ情報よりネガ情報が多いというだけでなく、ポジ情報は絶対量としても少ないという印象はある。若い世代が多く接するTVや映画や活字やウェブ上の情報で、結婚生活のポジティブな面を中心にすえたものがどれほどあっただろうか?