敗北を抱きしめて

書評ではありませんのでご注意を。
アビスパのような地方の弱小クラブのサポーターなんかやってると、負けることが大したこととは思えなくなりますね。
もちろん試合に負けたら悔しくて悲しくて腹立たしいのですけれど、フットボールにおいて常勝軍団というのはあまりあり得ず、例えJ2で断トツの成績を収めても昇格したら強豪クラブにボコボコにされ、またJ1で強豪クラブになっても激しいリーグ戦線では必ず敗北を重ねる時期に見舞われます。勝利の栄光だけに浸ることはできません。優勝クラブですら次シーズンでは苦戦することがしばしばなのに、エレベータークラブにもなりきれないアビスパが「勝ち慣れる」ということはまずあり得ないでしょう。畢竟、殆どのクラブは敗北とうまく付き合っていくことが求められるわけです。
UCLなど大きな大会のノックアウトラウンドはともかくとしても、多くのクラブにとって重要なのはリーグ戦をしっかりと戦い抜くことであり、勝つにせよ負けるにせよ翌週には次の試合が待っています。「明日なき戦い」などありません。なればこそ、我々が考えるべきは、負けを引き摺らないこと、敗北を糧にするということ、失敗からポジティブな部分を引き出した後は前を向き続けるということ、なのでしょう。進化の速いフットボールにおいては、感傷に浸ることさえ時には贅沢です。転んだら打ちひしがれる前に立ち上がる。すみやかに頭を切り替え、修正ポイントを探し出す。敗北は決して非日常ではありません。
これは人生も似たようなものでしょうか。嫌でも明日はやってくる。病める時も健やかなる時も。我々は敗北しても粛々と生きていかねばなりません。人生に必要なものは幼稚園の砂場で学べるそうですが、フットボール・スタジアムにも人生は凝縮されています。